Lumine Columbus - Michael Shannon



で 現 在 ス タ イ リ ッ シ ュ な シ ョ ッ プ や、アーティスト達がもっとも集う人気の エリアとなったブルックリン区。その中の GREENPOINT 地区にオーガニックのお茶専 門店 BELLOcQ(べローク)が ショウルーム とアトリエを兼ねたスペースをオープンしま した。BELLOcQ オリジナルのブレンドは高 級デパートのバグドーフ・グッドマンなどで も大人気。今回はパートナーのひとり、マイ ケル・シャノン氏(mIcHAEL SHANNON) にインタビューをしました。

自己紹介をお願いします。


 

Photo: Takayoshi NonakaNY

マイケル・シャノンです。マセチューセツ州の中部、ニューイングランドにある 小さな農村エリアの出身です。

僕は最初ファッションを勉強してました。そして暫くの間パリに移住して、デザ インスタジオで働いていました。それと同時に長年に渡りブラックスミス(鍛冶 屋)としても働いていて、オクソンというブランドの靴を主に作ってました。そ れからアメリカに戻り、帽子デザイナー(職人)をやりました。その後 NY に呼 ばれる機会に恵まれ、NY に来た頃は主にホームオブジェクト(家具雑貨類)を創っ てました。

ホームオブジェクトとは具体的にどの様なものを作っていたのですか?

ちょっとした家具やホーム雑貨、グラスや陶器のテーブルウェア、テキスタイル などをデザイン、制作してました。この仕事はマーサ・シチュワート(Martha Stewart) の元で 10 年間、2007 年まで続けていました。そしてマーサの次は 1 年ほどアンソロポロジーのホームデザイン部で働きました。


パートナーとの出会いについて教えてください。

パートナーのひとり、ハイディ・ヨハンセンはマーサ・スチュワートのところで フードコーディネーターとして働いて、その時に知り合いました。そして、僕等 はとても仲が良くなって、一緒にビジネスができたらいいね...という話をするよ うになり、何をいつやるかという風な具体的なことは決めずに、ただ漠然と一緒 になにか新しいことをやりたいね...といつも話していたのです。僕はハイディと 話しをしながらも別の道や、他にやりたいことを色々と模索していたのですが、 彼女がこの素晴らしいティー・ビジネスを具体的に提案してきたことで、僕もすっ かりそのコンセプトに魅せられてしまい、チームの一員として参加することにし ました。

ティー・ビジネスを始めることになった経緯やきっかけを教えて下さい。

もう一人の BELLOCQ のパートナーにスコットという人がいます。彼はハイディ の旦那さんです。スコットは素晴らしいアイディアマンで、主にコンセプトやビジ ネスプラン、ブランディングなどが得意な人なんです。でも、「お茶を売る仕事」 をしようというのは特に誰が言い始めたということではなく、しいて言えば、僕と ハイディはいつも仕事で世界中を廻っていたから、お土産でハイディが色んなお茶 を持って帰って来てくれたり、僕もヨーロッパが長く、色んな工場を訪ねていた中 で色々なお茶とも出会っていて、僕もお土産でみんなにお茶を買ってきていまし た。その時にとあるヨーロッパのブランドのお茶が気に入って、それをアメリカに 持ってきてビジネスにしようと思ったのですが、残念な事にヨーロッパ側の人達が 興味を持ってくれず、その会社のお茶部門をアメリカで展開できないと分かった時 に、スコットが「それなら自分たちでやってみよう。」と言ったことで、このビジ ネスを始めることになりました。

このヨーロッパの会社のお茶を通してお茶のクオリティについて知ることになっ た僕達は、スコットの助言もあって更にお茶についての勉強とリサーチをしました。 そして、茶葉の他にもハーブや花についてもかなりリサーチして、茶葉とハーブや 花を「ブレンド」した僕達のオリジナルのお茶を創って売ろうということにしました。 そのように決めてからの約 1 年半は、ベースにする茶葉を始め、ブレンドに使うハー ブや花に就いて未だ知らなかったことを勉強し、同時にエッセンシャルオイルや茶 葉とそれらの物の調合の割合(フレーバーリング)などの研究を重ねました。一番 苦労したのはオーガニックでしかもクオリティが高く、しかも一度に大量に焙煎せ ずに、且つ安定した供給ができるベース・ティーを世界中から探しだすことでした。 そして、それらが全て整った時に、「これならイケる!」という自信のようなものを 持つことができたので、ビジネスを始めました。

僕達等が目指しているお茶屋とは、とにかく純度の高いハイクオリティーの茶葉を 使うということです。たとえばアールグレイ茶にしても、ただのブラックティーの 茶葉ではなく高品質の物を使用し、特にアールグレイの香の素となるベルガモット も合成のものではなく、本物の高品質な物を使います。着香成分であるベルガモッ トは、一般的に売られているアールグレイ茶の場合、ほとんどが合成のものか或い は質の高くない物が使われることが多いのです。 とにかく僕達は色んなネットワー クや友人知人の紹介を通して、僕等のお茶に使うひとつひとつの素材を探すことに 尽力しました。茶葉はもとよりブレンドに使う高品質なバラの花弁を始め、その他 の花々やハーブ類を栽培している農場やガーデンを探すことだけに一年半ほどの時 間を費やしました。


初めてのショップをイギリスのロンドンで開けたのはどうしてですか?

それはパートナーのスコットのお陰です。スコットはクラフト・スタジオをやっ ているインテリアデザイナーでもあるのですが、彼は仕事で世界中のハイエンドな ショップのデザインを手掛ける事が多く、その時もロンドンで仕事をしていました。 その現場の近くに凄く素敵な物件があると連絡をくれたのがスコットです。この店 舗は僕達が探していたイメージにピッタリのものでした。もしアメリカで見つけて いたら絶対に借りたと思うような物件でした。その物件の大家さんも短期でも良け

れば僕達に貸したいと言ってくれたことと、スコットがとても先見の目を持ったアイ ディアマンだったので、彼もこの場所でやることに何かが見えた様で、僕等もどうせ やるなら母国アメリカとは全く違う土地で、しかもお茶の帝国であるイギリス、ロン ドンで自分たちのクリエイトしたこの新しいお茶が通用するのか?と挑戦しみたいと いう気持ちがロンドンでのポップアップストアを開けることを決めさせたんです。そ して、何よりも周りに誰もいない、そして少し隔離された感じの立地にあったその物 件は、僕達がお茶について更に研究や実験を重ねる研究所のような感じだったことも 良かったのです。ハイディもここで自由にブレンディングに没頭することができまし た。特にお茶のネーミングを見てもらえば分かるように、僕達のお茶は常に僕達がい る環境や状況から影響を受けているので、イギリスでのロイヤル庭園やその他のガー デンからも多くのインスピレーションを受ける事が出来たし、やってくる町の人々か らの影響も多くある、最高の場所だったのです。そして僕等がまだ完全に産み出すこ とができなかったこのティー・ビジネスをここでなら産み出せると思え、僕達自身も チームとしての結束が固まりました。


NY のスペースを開けるにあたってのデザインコンセプトはどういうことをベースにし ているのですか? お茶を出している方のスペースはロンドンの店の雰囲気をそのまま持って来ました。 奥の今創っている最中のスペースはショップの木を使ったハードなイメージとは変え て、柔らかい感じに仕上げる予定です。キャンバス地に薄い色合いを施した手作りの 壁や、同じイメージで創っているソファー、それらと合いそうなシャンデリアも付け ようと思っています。

この店に入ると、お店というよりは誰かのアパートに来たような気持ちになります。 それと、この家具や小物の配置、フラワーアレンジメントに到るまで、自分の家でも できそうでとても参考になりますね。 そう感じてもらえるのは嬉しいです。この店はカフェではないですが、人々が訪れた 時にすぐに落ち着ける雰囲気を与え、そして色々な驚きも発見出来るような空間にな るようにと考えてデザインしたのです。貴方の言うように友達や自分の家のお気に入

りのスペース、ゆったりリラックス出来る環境を創り上げ、その中で美味しいお茶を、 飲む...という、その全てを揃えることを BELLOCQ では提供したいと思っているの です。茶葉だけでなく、お茶を嗜む空間、状況をもできるだけハイクオリティなハー モニーとして創り上げることが「BELLOCQ のお茶」のコンセプトなのです。

まだビジネスを開けて一年半程度と間もなく、しかも卸しから始めたにも関わらず、 すでにメジャーのメディアやショップに取り上げられたり、賞を受賞してますが、 どのような PR をしていたのですか? ロンドンでポップアップショップを開けた時に PR を雇っていましたが、あまり 効果はありませんでした。僕等にとっての PR は店に訪れた人達、もちろん各業 界人も含めた人々が広めていってくれたのです。メディアの取材も同様です。と あるライターさんがたまたま訪れて気に入ってくれてレビューを書いてくれた... といった感じでした。そういう意味ではとても恵まれたことだったと思います。 賞は、イギリスベースの WallPaper マガジンというところで、お茶そのもので はなく、店全体のベスト・デザイン賞を光栄なことに頂きました。NY では今年 の 1 月にトレードショウに出店し、そこから色んな人がブログで紹介してくれ たりしたことから、色々なところから卸しの問い合わせが来るようになりました。 そして、バグドーフ・グッドマンと取引を始めたことで、更に注目を集めること になりました。今では約 100 社と卸しの契約をしています。本当にありがたいこ とです。

今後のビジネス展開について教えて下さい。

お陰さまで、驚くほどに人気が出て、世界中の色々なところから取引の話しが来 ています。もちろん世界中からです。卸しだけでは無く、ショップ展開などのオ ファーもあります。ですが、僕達はできるだけこのお茶のクォリティーをキープし たいので、コマーシャル的に大々的に事業を広げることは望んでいません。基本は 茶葉を売ることなので、私たちのショップのコンセプトやデザインを売るというよ うなことはしていません。しかし、希望があればコンセプトデザイナーのスコット と共に、アドバイスをし、必要があればスコットのスタジオがデザインに協力すると う形をとることはできます。僕達もビジネスとして成長して行きたいと思っています。

そして、ロンドンや中国の香港など、お茶に厳しい国で自分たちの茶葉とそれに 付随する BELLOCQ の提供するお茶とのライフコンセプトでどれだけ通用するの かというチャレンジもしています。その結果、今のところとても良い手応えを感 じています。僕達は、イギリスの紅茶文化と中国の茶葉を使った NY(アメリカ) 発祥の新しいお茶文化として BELLOCQ のスタイルが確立していけたらと思って います。

最後に、BELLOcQ のこだわりというものがあれば教えて下さい。

茶葉はもとより、BELLOCQ ではパッケージングにしてもできるだけオーガニック で環境に優しい物を使うように心がけています。例えばフレーバーティーパックセッ トの袋もプラスチックではないんですよ。これは樹から作られたものなんです。見 た目は透明でプラスチックみたいですけどね。土に還せるんです。それと、今作っ ているホテルに置くティーバッグも、バッグの素材はこの間見つけた素晴らしい日 本製の素材で、これもまた土に還る自然素材で出来ています。お茶缶はステンレ スや銀を使っていますが、それら以外は出来るだけリサイクルされた素材や、環境、 そして身体に優しい物を使うということにこだわっています。後、パッケージング にも僕等なりにこだわりを持っています。特にハイディは日本の包み紙とかが大好 きで、僕等二人とも日本の包み方の本を持ってるくらいです。日本の「包む」とい う技術や哲学からはいつもインスパイヤーされています。

貴方にとっての NY とは?

NY はとても厳しくてハードな場所ではあるけれど、どんな人でもありのままに全 てをすぐに受け入れてくれるし、自分の持っている可能性についてチャレンジをす るには最適な場所だと思います。何をするにも自由にできるし...。パリなどは受け 入れて貰えるまでにはかなりの時間を要します。パリやパリ人のリズムを理解し てそれに合わせていって、やっと...という感じです。でも、NY は誰もをスッとま るでそこが彼らのホームタウンであるように受け入れてくれると思います。それと NY では常にいい意味での人々や文化との対立があります。ドアを出たら必ず誰か しらにぶつかり、なにかしらと巡りあいます。僕は NY のそういうところも刺激的 で大好きです。